認知症と診断されたらあなたはどうしますか?
また家族が認知症と診断されたら、まず何をしたらいいのでしょうか。
NHKのあさイチで、若年性認知症の50代の男性が、患者の立場で出演され、とても貴重なお話をされていました。
調理師であった男性が異変に気づいたのは、味覚がおかしくなったということ。すっぱい味は分かっても他の味が分からない。このような味覚障害は認知症には珍しくはないようです。
彼は50代前半で若年性認知症と診断され、ショックと不安で3か月間は家から出られず、落ち込む日々を過ごしたそうです。言葉が出ない、字か書けなくなってくるなど、毎日できないことも増え、苛立ちがつのり、家族に当たり散らす毎日だったとふりかえっています。
しかしふとしたきっかけで、同じく認知症の人と話すことがあり、定期的に認知症の人と話すことで、気持ちは落ち着いていったそうです。
悩みを共有し、家族に言えない本音を語りあい、知恵を共有することで、不安な気持ちは徐々に解放されていったそうです。
男性は、本音で語り合える場が必要、と気づき地域の会議室などを使て、定期的に認知症の人同士が語り合える機会を作りました。そのうち彼は出にくくなっていた言葉が出てくるなど、症状に変化が現れたとのこと。いつの間にか不安から解消され前向きに進めるようになったそうです。
男性は認知症と診断されてから4年たちますが、NHKのアナウンサーに劣ることなく、穏やかな口調で理路整然と話し、ゲストも驚くほど認知症であるということを感じさせませんでした。
彼は大切なのは「不安をやわらげること」だと話しています。もし発症当時に語り合える仲間がいたらきっと苦悩の日々は3か月も続かなかったのではないか、もっと早く楽になれたのでは、と話しています。
認知症専門の医師は、認知症の患者同士が、語り合い、不安をやわらげることは、精神的に前向きになるだけでなく、病気の進行を遅らせる力もあると説明しています。
下の表は認知症と診断された後の症状の進行を示すグラフです。。
青は急激に症状が悪くなり、赤は症状がなだらかに進んでいることを示しています。
この差は
赤は診断直後に「認知症の方同士のコミュニケーション」をとった人
青は「認知症の方同士のコミュニケーション」をとらなかった人
この図から見ると認知症と診断されてからコミュニケーションをとっていない人は急激に症状が悪化すると表されています。
認知症専門の医師は、は以下のように説明していました。
認知症に大切なのは「不安をやわらげるごと」
診断直後は精神的に非常にショックを受けてしまい、それが症状を悪化させてしまうことがある。診断直後に正しい知識を与え「不安をやわらげる」ことが大切。医師に相談したり地域のコミュニティに相談するなどできるだけ一人で抱えこまないことが大切、と話していました。
先ほどの50代で認知症を発症した男性も認知症患者の気持ちは認知症だと理解できることもあると話しています。
例えば夏なのに何枚も重ね着をして汗をかいている男性がいました。みかねた施設の職員は脱がしてあげようと何度も試みたそうですが、男性は決して服を脱がない。そんな時同じ認知症の方が話したのは「不安だから服を脱ぎたくないのだと思う」「着こんでると安心する」と説明していました。
認知症の方にみられる行動の中で、私達が理解できない事が多々あります。しかし、その行動には必ず理由があると言われ、認知症の方同士では理解できる可能性もあります。認知症の方同士のコミュニケーションは本人だけでなく家族にも役立つかもしれません。
今できること
医師は「認知症はなったら終わり」ではなく「認知症はなってからが勝負」と強く話しています。
「認知症は精神的な不安をとりのぞく事で進行を遅らせることができる、認知症の治療に遅すぎることはない」
今からでも、できるだけ地域の人とコミュニケーションをとり、不安をできるだけ解消してほしい、機会があれば認知症の人同士話をしてほしいと話していました。
地域の活動の一つとして、2018年3月末から全国の市町村の役所で「本人にとってのよりよい暮らしガイド」が希望者に無料で配布されます。
NHK出演の男性も監修に携わっており、
「もしこの冊子に診断直後に出会っていたらもっと早く不安は解消され自立していたと思う」とお話されていました。
近い将来高齢者の5人に一人がなると言われている認知症。認知症は誰にでも起こりうるもの。安心して「自分は認知症です」と言える街づくり、認知症の人を不安にさせない、孤立させない街づくりが今求められているようです。