「NHKスペシャル 人体 生命誕生」 という番組で山中教授が生命誕生についてお話されていました。
「卵子、精子」の状態から人間へと成長していく過程を、最新の情報を交えて分かりやすく説明されており、神秘的で感動する内容でした。
始めは精子と卵子から・・
人間の卵子はわずか0.1ミリ、そこにさらに小さい精子が入り込むことで受精します。
受精卵を子宮にしっかりと着床させるため、母体は生理を止めます。これは生理の血液で受精卵が流されることを防ぐためとのこと。
このシステム、実は受精卵からのメッセージによるもの。「生理を止めて」「私ここにいるよ」とメッセージ物質を母体にむけて放出することで、母体が生理を止めるそうです。
母親が妊娠に気づくずっと前から、体内では赤ちゃんと母体の間でメッセージのやりとりをしているのですね。
このメッセージ物質が「HCG」と呼ばれるもので、着床後に分泌されるホルモン。
妊娠検査薬などは尿中の「HCG」の量が高くなることで妊娠を判定しています。
その後、受精卵は細胞分裂を繰り返し、200種類以上の細胞に分かれていきます。
人間の体は最初に何が作られるの?
さて、体はどの臓器を最初に作るのでしょうか。培養皿の上でES細胞で実験しました。
まだどの臓器にもなっていない細胞に、ウイントというメッセージ物質を与えます。
1週間後、培養皿の上で細胞の一部が動き始めました。その2日後にはシートが波打ち始めました。そう、最初に作られる臓器は心臓のようです。
次に、心臓は近くの細胞を刺激して肝臓のようなものを作っていきました。
体内では受精5週目で心臓が動き、8週目で手足が作られるそうです。
2か月たつと心臓の下には肝臓、肺、腸もできていました。一つの受精卵が色々な臓器に変化していくのですが、これはメッセージ物質が放出されるタイミングや濃度が異なることで様々な臓器に変化していくようです。
臓器を作り終えたら・・
さて、臓器を一通り作り終えると今度は大きく育つことが大切。
そこで胎盤の登場ですが、この胎盤とは母体から作られているものではなく、赤ちゃんの受精卵から作られているそうです。
胎盤が接触する母体の子宮の壁には「恵みの窓」とよばれるいくつもの穴が開いています。
この「恵みの窓」から母体の血液などが運ばれて胎盤を通して赤ちゃんに酸素や栄養が届くそうです。
さらに、「恵みの窓」を通して赤ちゃんには血液だけでなく、母体からのメッセージ物質が届きます。それは赤ちゃんに対して「大きくなりなさい」「もっと栄養を吸収しなさい」というメッセージ。
そのメッセージを受け取ると胎盤の中の赤ちゃんの血管はさらに広がり栄養素をたくさん吸収できるようなります。
しかし妊娠4ヶ月頃、赤ちゃんが大きくなってくると今までの栄養では足りなくなってきます。栄養不足では赤ちゃんは育つことができません。
今度は赤ちゃんからメッセージ物質「PGF」が放出され「栄養が足りない、もっと大きくなりたい!」と母体に伝えます。
このメッセージを受け取った母体は「恵みの窓」を広げ、与える血液の量を増やします。
同時に胎盤の中の赤ちゃんの血管もぐんぐんと伸びていき子宮に潜り込み、血管を探し出し血管の壁をつきやぶり大量の血液を放出させます。これにより赤ちゃんはたくさんの酸素と栄養を受け取ることができるのです。
母と子はこのように胎盤を通して会話を行い、必要なメッセージを伝えあっているようです。
メッセージ物質を使った今後の研究
このように受精卵はとても精巧に作られているのですが、メッセージ物質がうまく働かず、臓器に障害をかかえて生まれてくるお子さんもいます。
オハイオ州に住む12歳のランドリーちゃんは、膀胱や腸などいくつもの臓器に障害をかかえていますが、生まれる前にメッセージ物質がうまく働かなかったことが原因と考えられています。
幼い頃から何度か手術を繰り返してきましたが、ここ最近は肝臓の状態が悪化しているのとこと。
そこで最近治療に関わっているのが、日本人の武部医師。
彼の目指す治療は、IPS細胞から小さな肝臓を作り出し患者の体に埋め込むこと。
世界中の科学者が挑んでいる再生医療です。
武部医師は、培養では複雑で作ることが難しいとされている肝臓を、メッセージ物質を使って作ることに成功しました。
わずか数ミリの小さな肝臓を、肝臓の機能が落ちたマウスに埋め込みました。
すると30日後の生存率が22%から94%にアップ。
世界で初めて体内で実際に働くミニ肝臓を作り出すことに成功した武部医師。
この方法を人間の治療に生かすため、ミニ肝臓を大量生産する施設を去年から作っているそうです。
そして2年後の2020年には、重い肝臓病を患う子供たちから臨床試験を始めたいとお話されていました。