骨は負荷をかければ丈夫で太い骨になると言われていますが、過度な運動は疲労骨折や骨密度減少のリスクにつながります。
特に成長期の子供たちは骨の強度が弱く過度な運動は疲労骨折の要因となります。
さらに女子は食事制限などから必要摂取量をとらずにいるとホルモンバランスがくずれ無月経を引き起こし骨密度の減少へとつながります。
下記は日本陸上連盟の公式サイトから「疲労骨折」と「骨密度減少」の部分を引用しています。
日本陸連栄養セミナー2017「めざせ骨太アスリート」より抜粋
2017.05.01(月)委員会
日本陸連栄養セミナー2017「めざせ骨太アスリート」を開催しました
日本陸連栄養セミナー2017「めざせ骨太アスリート」を開催しました。
4月9日、味の素ナショナルトレーニングセンターにおいて、「日本陸連栄養セミナー2017」を開催しました。
~~~~~~~~~~~抜粋~~~~~~
【疲労骨折を起こしやすい選手は?】
・月経異常がある選手は、疲労骨折を起こす場合が明らかに多い。
・男子の高校駅伝選手にも疲労骨折が多い。高校1年生で多く、高校に入ると中学に比べて練習量が多くなり、また受験等でブランクがあって急に始めることも要因。
・骨密度が低いことが疲労骨折を起こす原因と言える。
・骨の強さに関係しているのは?
1.遺伝:1つの遺伝子により決まっているわけではないが、強い家系、弱い家系があると言える。
2.年齢:成長期に強くなり、年を取ると弱くなる。
3.体格:大きいと強く小柄だと強くなりにくい。
4.性別:男子の方が強い
5.運動:骨を刺激し強くする。
6.食事:骨の材料
そのほか、睡眠、日光など様々な要因がある。
・ジュニア期に骨を増やすことが重要である。増やせる時期に増やしておかなくては、大人になってから骨を増やすことは難しい。
・基本的に負荷が加わらないと骨は弱くなってしまう。怪我で動かせなかった部位をいきなり動かすと再度疲労骨折を起こす可能性がある。
・陸上選手の疲労骨折で最も多く発症している年齢は男子で16歳、女子で17歳ころ。高校1~2年生で多く発症している(外来を受診している選手を対象とした調査)。インターハイ選手における疲労骨折に関して調査した結果、女子では高校1~2、男子では中3、高1、高2くらいで多くなる。
・骨の強度が低下する要因が何かを考えると、骨粗鬆症に対して考えられたものをみて見ると、ビタミンDやKの不足、ホルモン(エストロゲン)の欠乏などが挙げられる。【陸連育成メディカルチェックにおける長距離走選手の骨密度】
・一般の男女の標準値に対して、長距離選手の腰椎骨密度は低い傾向がある。短距離選手は一般人よりも高い。
・女子育成選手では、無月経の選手の方が、骨密度が低い傾向あり、ホルモンや低体重が要因であることが明らかとなっている。中学生年代のトレーニングの仕方が重要であり、一般的に早い段階で、トレーニングを取り入れると初経年齢が遅くなる。初経月齢が遅いと腰椎の骨密度が低いということが明らかである。また、無月経状態が長くなればなるほど骨密度が低くなることがわかっている。中学生から過度のトレーニングさせるのは良くないのではないか。【骨太な選手になるためには?】
・一般人は、1年間に20〜30%の骨が新しい骨に入れ替わり、5年経つと全身の骨が生まれ変わっている。アスリートは一般人より骨の形成・吸収が高まっている事がわかっている。そのため、材料となる骨の成分を多く摂取する必要がある。
・発育期は一生の骨の量を決める重要な時期である。骨はとくに男性で12〜14歳で多く作られる(女子はピークが少し早い)。ピークの前後2年頃で一生のうちの30〜40%の骨量を蓄えることになる。また、身長の増加のピークの1年後に一番骨を蓄える時期がくる。骨を増やせる時期(発育期)に骨が増えやすい生活をする事が重要である。
・アスリートの場合は運動が過剰になりすぎる事で、女性選手の無月経などマイナスに働く事があるため、トレーニング量を決める事が重要である。女子選手の場合は月経周期を確認する事でトレーニング量が過度かを見る事が出来るが、男子選手の場合はわかりにくい。
・骨密度を高くするのに必要な栄養素は、炭水化物、タンパク質、ミネラル、ビタミン類であるが、色々な食べ物を偏りなく食べる事が大切。
・十分な睡眠をとる事も重要である。近年、睡眠時間が短いジュニア選手が多く見られるため、睡眠時間を確保することも重要視すべきである。
スポーツドクターの立場から、ジュニア期(小~高校生)の障害について実際のアンケート結果を基に、鎌田氏より講演がありました。・子供(小・中学生)の運動器の特徴として、力学的ストレスに弱い。運動器の成長については、身長が一番伸びた時期よりも少し遅れて骨が増加する事が明らかになっている。そのため、身長が伸びている時期はまだ骨がもろい可能性がある。そこを考えて栄養補給をする必要がある。
・種目の開始年については、ヨーロッパではガイドラインが設けられており、陸上競技については11歳から開始する事が進められている。子供達自身がスポーツを楽しんで理解して正しい知識を持って行う事が重要である。(子供は大人のミニチュア版ではない)
・身体や骨などの発育発達も見て量や内容についての安全なトレーニングの指標を出すためにインターハイ(2013年度)に出場した選手約2300名と全国高校駅伝大会(2015年度)約500名に出場した選手を対象にアンケート調査の結果は次のとおり。
・スポーツによる外傷・障害は約8割にあり、疲労骨折については駅伝に出場した選手の方が多い。
・オーバートレーニング症候群の自覚があった方が、また休日がないほうが、疲労骨折の発生率が多い。
・疲労骨折時の月経状態を見ると、半数以上が無月経。さらに、初経が遅かった女子選手において疲労骨折の発生頻度が高い。中1、中2に無月経の経験があった選手において、そして複数学年で無月経の経験がある選手で疲労骨折の頻度が高い。
・食事制限があった選手の方が、男子選手で疲労骨折を起こしやすいため、食事制限はスポーツを行う上では必要なことではあるが、正しい知識がない状態でただ食事制限を行うと疲労骨折のリスクが高くなるのではないかと考える。女性アスリートの三主徴(無月経・骨粗鬆症・エネルギー不足)については、エネルギー不足が原因となり、無月経がおこり骨粗鬆症に陥ってしまう可能性があるため、食事の摂取が重要になる。
指導者の立場から骨の障害を起こさせないために取り組んでいることについて講演がありました。女子実業団選手は疲労骨折が多いと感じている。女子選手が最もストレスを感じるのは、怪我をして走れないこと、食事を我慢(制限)することである。そのため、「怪我しない、貧血にならない、風邪ひかない、しっかり食べて丈夫な身体、骨を作って勝とう」。また、怪我をさせないために選手の心身の状態を把握し、内部、外部のスタッフとも情報を共有している。
・状況を把握する手段は下記のとおり。
<年度はじめ>
・骨密度、身体組成を測定(DXA法)
・メディカルアンケートで疲労骨折や怪我の既往歴の確認(貧血、月経、サプリメントなど)
ドーピングに気を付けるようスポーツファーマシストなどに相談すること、また服用する際は必ずスタッフに報告栄養士の立場から、ジュニアアスリートの骨の健康を高めるための食事・栄養素について講演がありました。
「指導者の立場としてジュニア選手をみるスポーツドクター、栄養士への要望」
安養寺氏
ジュニア期は、年齢にあった強化をすることで、その選手の選手生命を伸ばすことになるため、発育発達を止めるような指導はしないでぼしい。特に長距離はジュニアも年間を通してトレーニングや試合があるため、走りながら心と体をリラックスさせる期間を作るべきであると考える。また女子選手は、特に高校生では婦人科系にいきにくい場合もあるが、婦人科系を受診する大切さを啓蒙して欲しい。
高校から実業団に入るときに一気に体型が変わる選手がいる。それだけ食べることを我慢してきた反動が出る。食べることに嫌悪感を抱いている選手も多くいるため、食べることの重要さを中高時代から伝えて欲しいと思う。